香港インバウンド市場概要 ― 訪日香港人の動向

2026.05.27

人口約750万人の香港から、年間およそ250万人規模が日本を訪れています。これは人口比でみれば世界でも突出した訪日率であり、香港は日本にとって「規模」と「安定性」を兼ね備えた最重要市場のひとつです。

しかし近年、香港市場の性格は大きく変わりつつあります。訪日者数はすでにコロナ前を超え、市場は「数を伸ばす」段階から、「滞在を深め、訪問先を広げ、消費の質を高める」段階へと移行しました。旅行者の9割が個人手配、6割以上がリピーターという構造のなかで、いかに「次に行く理由」を提示できるか——香港インバウンドの成否は、この一点に集約されつつあります。

このページでは、訪日香港市場の規模・旅行者像・消費構造・訪問先・情報接点を整理し、そのうえで、成果につなげるための視点をまとめます。

① 市場規模 ― 数字でみる香港インバウンド

訪日香港人は、2024年に約268万人と過去最高を記録しました。コロナ前のピーク(2019年・約229万人)を約17%上回る水準です。続く2025年は約252万人とやや反落したものの、依然としてコロナ前を約1割上回る高水準を維持しています。

訪日香港人数備考
2018年約221万人
2019年約229万人コロナ前ピーク
2020〜2022年大幅減少コロナ禍による渡航制限
2023年約211万人V字回復
2024年約268万人過去最高
2025年約252万人高水準を維持、「予言」の影響で前年比減

注目すべきは、香港の人口規模に対する訪日の「厚み」です。人口約750万人に対し年間250万人規模の訪日があるという事実は、香港社会のなかで日本旅行がすでに「特別なイベント」ではなく「日常的な選択肢」として定着していることを示しています。

季節性にも明確な傾向があります。 月別にみると、年末(12月)が一年で最大の繁忙期となり、復活祭(イースター)と桜シーズンが重なる春(3〜4月)、そして夏(7〜8月)が続きます。一方、9月前後は比較的落ち着く傾向があります。

2026年に入ってからも訪日香港人数は前年並みの水準で推移しており、市場はすでに成熟局面にあります。つまり、「人数をさらに増やす」という発想だけでは成長を描きにくい——これが、香港市場を考えるうえでの出発点となります。

② 訪日香港人旅行者像 ― 誰が、どのように来ているのか

訪日香港人を理解するうえで欠かせないのが、次の4つの特徴です。

個人旅行(FIT)が9割超 旅行形態は個人手配が約91%を占め、団体ツアーはわずか5%程度にとどまります。香港の旅行者の大半は、行き先・宿・交通・体験を自分で組み立てる旅行者です。これは、旅行会社のパッケージツアーに地域を組み込んでもらう従来型の発想が通用しにくいことを意味します。一人ひとりの旅行者に、直接、旅行イメージを届ける設計が前提となります。

6割以上がリピーター、4人に1人は「6回以上」 訪日が「初めて」という人は約35%にとどまり、残る6割以上はリピーターです。さらに、訪日6回以上の層が全体の約4分の1を占めます。東京・大阪・京都といった定番ルートはすでに経験済みという旅行者が大多数であり、彼らが次の旅行先に求めるのは「まだ訪れていない場所」「もう一度行きたくなる体験」です。香港市場では、新規旅行者の獲得以上に、リピーターに再訪の理由を提示できるかが成果を左右します。

滞在は長期化傾向、7日以上が約半数 平均滞在日数は約6泊で、近年は緩やかな長期化傾向にあります。滞在期間の内訳をみると、4〜6日が49.6%と約半数、7日以上の長期滞在も約46%を占めます。長い滞在日数は、地方への周遊や連泊、体験の追加を提案できる「時間的な余白」が大きいことを意味します。

③ 消費構造 ― いくら使い、どこに伸びしろがあるか

訪日香港人の1人当たり旅行支出は約22.6万円。これは台湾(約18.6万円)や韓国(約10.5万円)を上回り、中国(約24.6万円)に迫る水準です。香港は「人数」だけでなく「単価」の面でも質の高い市場だといえます。

国・地域1人当たり旅行支出(2025年)
シンガポール約31.8万円
中国約24.6万円
香港約22.6万円
タイ約20.4万円
台湾約18.6万円
韓国約10.5万円

旅行消費総額でみると、香港は約5,613億円で訪日市場のなかで第5位。人口規模が中国・韓国・台湾よりはるかに小さいことを踏まえれば、香港一人ひとりが日本経済にもたらす貢献度の高さが際立ちます。

費目別にみると、伸びしろの所在がはっきりします。 1人当たり支出の内訳は、宿泊費(約7.5万円)・買物代(約6.9万円)・飲食費(約5.4万円)が大半を占める一方、娯楽・サービス費はわずか約7,300円にとどまります。

つまり、アクティビティ・体験・エクスカーションといった「コト消費」は、香港旅行者の支出のなかで最も開発が遅れている領域です。裏を返せば、ここが最大の伸びしろです。体験商品を設計し、予約・販売の導線に乗せることは、地域の受入価値を高めると同時に、客単価を引き上げる最短ルートとなります。

④ 訪問先 ― 集中する都市と、地方に開く余地

2025年の都道府県別訪問率をみると、東京(約36%)、千葉(約32%)、大阪(約29%)、京都(約16%)、福岡(約16%)が上位を占め、訪問先は依然として大都市圏に集中しています。

順位帯主な訪問先(訪問率)
上位東京 約36%/千葉 約32%/大阪 約29%/京都 約16%/福岡 約16%
中位愛知 約7%/沖縄 約7%/北海道 約7%/神奈川 約5%/兵庫 約5%
地方圏大分 約5%/山梨 約5%/熊本 約4%/奈良 約4%/岐阜 約4%/静岡 約3%/長野 約3%

数字の上では都市集中が続いていますが、ここに香港市場ならではの「開く余地」があります。6割を超えるリピーターと、約6泊という長い滞在日数を併せて考えれば、「定番ルートはもう十分」という層に対して、地方は確かなチャンスを持っているのです。

実際、同じく訪日リピーター比率の高い台湾市場では、定番都市を抑えて多くの地方都市が人気を伸ばす動きがすでに表れています。香港でも、同様の「地方分散」が進む素地は十分にあります。

ただし、地方が選ばれるかどうかは、訪問率の数字そのものよりも、「なぜ香港の人が、わざわざそこへ行くのか」を明確に言語化し、伝えきれているかにかかっています。固有の魅力を、香港の旅行者に届く言葉と接点で伝えられた地域から、選ばれていきます。

⑤ 情報接点 ― 何が意思決定を動かすのか

香港の旅行者が「旅行前に役立った」と回答した情報源は、SNS(約43%)、動画サイト(約40%)、個人のブログ(約24%)が上位を独占しています。一方、地方観光協会の公式サイトを挙げた人は約5%にとどまります。

情報源役立ったと回答した割合
SNS約43%
動画サイト約40%
個人のブログ約24%
日本政府観光局サイト約12%
旅行会社サイト・口コミサイト・宿泊施設サイト各 約11%
地方観光協会サイト約5%

この結果が示すのは明確です。香港の旅行者は、行政や事業者の「公式情報」よりも、現地目線・個人目線の「リアルな発信」で行き先を決めているということです。

したがって、香港市場の集客は、広告出稿の量を競うものではありません。信頼されるメディアや発信者を通じて、具体的でイメージしやすい旅行体験を、いかに届けられるか——ここに成否がかかっています。とりわけ、訪日経験が豊富で「目の肥えた」香港のリピーター層に響かせるには、表層的な観光紹介ではなく、深さと信頼性を伴ったコンテンツが求められます。

⑥ 香港市場で成果を出すための3つの要点

1. 「数」ではなく「深さ」で勝負する

香港はすでに成熟市場です。新規送客を追うよりも、リピーターに再訪の理由を提示し、滞在日数と満足度を高めることが、成果に直結します。「行ったことのない地域」「もう一度行きたい体験」を、いかに具体的に描けるかが鍵です。

2. 個人旅行者に、直接届ける

旅行者の9割がFITである以上、旅行会社のツアーに任せる発想では届きません。SNS・動画・信頼されるメディアを通じ、一人ひとりの旅行者の意思決定に直接働きかける設計が前提となります。

3. 「体験の価値」を、伝えきる

最も支出が薄い娯楽・体験領域は、裏を返せば最大の伸びしろです。地域ならではの体験を発掘し、その価値を香港の旅行者に響く形で発信できれば、滞在の質と満足度を高め、再訪の動機にもつながります。「そこで何を体験できるのか」を具体的に描き、届けることが重要です。

⑦ AISが提供できる支援

AISのインバウンドサポートは、訪日プロモーションを現地目線でトータルサポートしています。中華圏向けの訪日旅行情報メディア「步步日本(ブーブーニホン)」を自社で運営し、現地ユーザーと日常的に接しているからこそ、最新のニーズやトレンドを的確に把握できます。リーチ数やPV数にとどまらず、「実際の集客」につなげてきた実績とノウハウが、AISの強みです。

ここまで述べてきた「FITが9割」「6割超がリピーター」「意思決定はSNS・動画起点」という香港市場の特性に合わせ、AISは次のプロモーション支援を提供しています。

自社メディア「步步日本」を活用したWebプロモーション

「步步日本」は2009年に開設した、台湾・香港向けの訪日旅行情報サイトです。月間約30万PV・約20万ユーザーが利用し、閲覧の2割以上を香港が占めます。利用者には訪日経験10回以上のヘビーリピーターが多く、本ページで述べた「目の肥えた香港のリピーター層」とまさに重なります。

編集長は台湾の文学賞作家・張維中。経験豊富な現地ライターによる質の高い記事とSEO設計により、公開後も長期的に読まれ続けるコンテンツを制作します。タイアップ記事、エリア特集ページ、バナー広告、SNS投稿などを通じ、信頼される現地メディアの文脈で、地域の魅力を香港の旅行者に届けます。

SNS広告・インフルエンサー・動画プロモーション

香港の旅行者の意思決定を動かすのは、SNS(約43%)と動画サイト(約40%)です。AISは、ターゲットや目的に応じたSNS広告の運用、現地インフルエンサーの起用、近年需要が高まるショート動画コンテンツの企画・制作まで対応。自社メディアの活用にとどまらず、最適な手法を組み合わせたプロモーションプランをご提案します。

インフルエンサーによる取材

インバウンド調査・マーケット分析

「香港の旅行者から、自地域の観光資源はどう見えているのか」。AISのインバウンド調査は、マーケット全体のデータ分析だけでなく、観光地・施設・商品といった個別対象の評価を、外国人目線で可視化することを重視しています。

Webアンケート、インタビュー、SNS分析、モニターツアーなど、目的に応じた手法を組み合わせて実施。步步日本のユーザーやSNSを活用した香港・台湾向けのアンケート調査も可能です。調査結果は、「誰に、何を、どう伝えるか」という戦略立案や、響くコンテンツ設計の基礎としてご活用いただけます。

インバウンド向け調査の実施

FAMツアー・現地プロモーション

地方の魅力を香港市場に広げるには、現地の旅行会社やメディアに「リアルに伝える」接点が有効です。AISは、海外の旅行会社・メディア関係者を対象としたFAMツアー(招聘事業)を、対象者の選定から行程企画、手配、アポイント調整までワンストップで企画・実施。招聘後はアンケートやSNS投稿をもとに分析し、記事・コンテンツ発信や次のPR施策へとつなげます。

あわせて、香港での旅行フェアへの出展支援、現地旅行会社・メディアとの商談、現地営業活動の支援も行い、ターゲット市場へ直接アプローチします。

旅行会社の招請

市場調査・戦略立案から、自社メディア・SNS・インフルエンサーを活用したプロモーション、現地での商談・招聘まで——AISが訪日香港プロモーションをトータルでご支援します。香港インバウンドの強化をお考えの自治体・観光協会・DMO・観光施設・各種事業者の皆さまは、お気軽にご相談ください。

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