地方のインバウンド集客を考えるとき、まず直面するのが「認知度の壁」です。東京・大阪・京都のような大都市と違い、地方には国際的な知名度がない。だから外国人は来ない──そう思われがちですが、本当にそうでしょうか。今回は福井県を例に、地方インバウンドの本質的な課題と、そこに潜むポテンシャルについて考えてみたいと思います。

弊社が運営するタイ向け訪日旅行メディア「Chill Chill Japan」が2025年に実施したアンケート調査(n=2,193)では、「タイ人が行きたい都道府県ランキング」で福井県は47都道府県中45位という結果でした。得票率はわずか0.1%。同じ北陸の富山県が14位(1.7%)、石川県が38位(0.2%)であることを踏まえると、タイ市場における福井の認知度がいかに低いかがわかります。
ただし、ここで立ち止まって考えてほしいのは、この数字が示しているのは「人気のなさ」ではなく「知られていないこと」だという点です。そもそも知らない場所を「行きたい」とは答えられません。つまり45位という順位は、福井県が「選ばれていない」のではなく、「選択肢に入っていない」状態を意味しています。
この違いは、インバウンド戦略を考える上で非常に重要です。「人気がない」なら打つ手は限られますが、「知られていない」なら情報発信という明確な解決策があります。
では福井に、タイ人旅行者を惹きつける魅力はあるのでしょうか。同調査でタイ人が訪日に求めるものを聞いたところ、興味深い結果が出ています。

最も多いニーズは自然観光で、回答者の70.2%が挙げています。越前海岸・東尋坊・白山・九頭竜川といった福井の自然コンテンツは、このニーズに直接応えるものです。次いで食体験(64.9%)には越前がに・焼き鯖・へしこ・越前そばが、桜・紅葉・雪景色への需要(それぞれ約62〜63%・52%)には足羽川の桜並木・一乗谷の紅葉・スキージャム勝山が対応します。神社仏閣・古街並みへの関心(42〜46%)には永平寺・越前大野城・一乗谷朝倉氏遺跡が応えられます。
さらに特筆すべきは福井県立恐竜博物館です。「世界三大恐竜博物館」のひとつとして知られるこの施設は、言語・文化の壁を超えた普遍的なテーマ性を持ち、ファミリー層への訴求はもちろん、SNSでの拡散にも非常に向いているコンテンツです。恐竜という切り口は、タイ人旅行者にとって「行ったことがある場所」にはほとんど存在しない、福井だけが持てる強みです。

つまり福井の課題は「何を売るか」ではなく「どう伝えるか」に尽きます。コンテンツとニーズのマッチングはすでに成立しており、伝え方次第で大きく状況を変えられる余地があります。
もうひとつ重要なデータがあります。同調査の回答者のうち、約66%がすでに訪日2回以上のリピーターでした。東京・大阪・京都といった定番エリアを経験済みの旅行者が多数を占めており、「次は行ったことのない地方へ」という意識が市場の中に確実に育っています。
北陸新幹線の福井延伸(2024年3月)も大きな追い風です。金沢を起点にした周遊ルートに福井を加えることが格段に容易になり、旅行会社が商品として設計しやすい環境が整いました。「金沢は知っている、次は福井へ」という流れを作る条件が、インフラの面でも整いつつあります。
地方インバウンドの認知拡大において、旅行会社への営業(BtoB)だけでは限界があります。消費者の間に「福井に行きたい」という声が育っていない状態では、旅行会社側も積極的に商品として売り込みにくい。逆に消費者への情報発信(BtoC)だけでは、旅行者が実際に予約・訪問するルートが整いません。
重要なのは、消費者が「知る」→「行きたいと思う」→「旅行会社に相談する」という流れを意図的に設計することです。消費者の認知が高まることで、旅行会社も「お客様に聞かれるから扱いたい」という需要主導型の商品化が実現します。BtoBとBtoCは対立する施策ではなく、互いを強化し合う関係にあります。
また、タイ人旅行者の約52%が旅行の3ヶ月以上前から情報収集を始めているというデータからも、SNSやWebメディアを通じた早期の認知形成が購買行動に直結することがわかります。「いつ、どのチャネルで、誰に届けるか」という設計が、施策の効果を大きく左右します。
今回の福井×タイ市場の分析が示すのは、「知名度が低い=インバウンドに向いていない」という思い込みを、データで丁寧に解きほぐすことの重要性です。認知度の低さは課題ですが、コンテンツの親和性・リピーター需要・交通インフラという3つの条件が揃えば、それは十分に変えられる課題です。
弊社では、自社調査データや現地旅行会社とのネットワークをもとに、市場分析から情報発信・旅行会社へのセールスまでを一体で設計・実行するサポートを行っています。
「うちの地域にインバウンドで何ができるか、まず一緒に考えてほしい」というご相談から、お気軽にお問い合わせください。
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